管理職にコーチングが必要なわけ②
人手不足や働き方改革により、少ない人数で、かつ、決められた時間の中で、成果を出さなければならない状況の中、管理職として成果を出すためにはスタッフ一人ひとりの生産性を上げるということが喫緊の課題であることは言うまでもありません。そのためには、スタッフ一人ひとりが自ら考えて行動を起こすことが重要となります。
目次
- ○ 管理職がコーチングを身につけることの大切さ
- ○ コーチングとティーチングの違い
- ・1)会話のスタイル、アプローチの仕方
- ・2)相手の思考
- ・3)コーチング、ティーチングが適した場面
- ・4)メリットとデメリット
- ○ 管理職がコーチングによるマネジメントができるようになる効果
管理職がコーチングを身につけることの大切さ
管理職の方をコーチングをしていると、部下に対して「これをやるようにと言ってもなかなか言ったことを理解して動いてくれない」「言われたことだけをやるのではなく自分で考えて動いて欲しい」といった声を聞きます。
従来型のマネジメントだけでやっていくと、マニュアルに書いてあるものはこなすことができても、それ以上のことをやらなくなったり、イレギュラーな対応が必要なときに、自分で考えて臨機応変に動くということができないスタッフが増えてしまうのではないでしょうか。
また、上意下達のやり方で部下が動いていた時代は、上司が部下に指示、命令を出していればよかったかもしれません。しかしながら、以前と比べると多様性が尊ばれ、「みんな違ってみんないい」という考え方が広がる中、従来のやり方では人は動かなくなりました。
少しでも威圧的に振舞って無理やり部下を動かそうものなら、「それってパワハラですよね」と言われる時代です。
上司と部下が信頼関係を築き、スタッフに行動を起こしてもらうためには、管理職は従来型のマネジメントだけでは限界がきていると言えます。そのような環境の変化に対応するためにも、コーチングをプラスしたマネジメント手法が求められているのではないでしょうか。
従来型のマネジメントの代表的なものの一つにティーチングがありますが、今回は、ティーチングとコーチングの違いについて考え、それぞれどのような場面で使いわけるとより効果的にマネジメントができるのかをお伝えしたいと思います。
コーチングとティーチングの違い
ティーチングとコーチングにはどのようなの違いがあるのでしょうか
・会話のスタイル、アプローチの仕方
・相手の思考
・適した場面
・メリットとデメリット
という視点からそれぞれの違いを見ていきたいと思います。
コーチングが良くて、ティーチングが悪いというわけではありません。コーチングは万能ではありません。それぞれの違いを理解した上で、適切に使いわけたり、両方を織り交ぜてマネジメントをするということが大切です。
1)会話のスタイル、アプローチの仕方
ティーチングは、知っている人が知らない人に知識や技術を教えるという形になるので、会話が一方通行になりがちです。
そして、知識や技術といった”答え”を持っている人が経験が浅い、未熟な人に”答え”を教えるというアプローチです。
コーチングは、コーチ(コーチングをする人)もクライアント(コーチングを受ける人)も話すと聞くの両方の役割を担うので、双方向のコミュニケーションになります。
そして、コーチ(コーチングをする人)もクライアント(コーチングを受ける人)もお互いが問いを共有することで、答えを一緒に探すというアプローチになります。
2)相手の思考
ティーチングは、「Aを求めるタイプのお客様ならBというサービスを提供する」という指示や「お客様がCが欲しいと言った場合もDのサービスを勧める」とマニュアルに書かれているように対応するというように、上司の指示やマニュアルの内容を一方的に伝えるため、相手の思考が固定的になりがちです。
コーチングは、「Aを求めるお客様にはどんなサービスなら喜んでいただけるのか?」と問いかけたり、「Cが欲しいと言われるようなお客様にはどんな傾向があるのだろか?」と問いかけ、一緒に考えるので、創造性が広がります。
3)コーチング、ティーチングが適した場面
ティーチングは、組織やチームのルールを徹底したり、知識や技術を習得させるような場面に適しています。
コーチングは、これまでにない多彩なアイデアを部下に出してもらたり、相手に自分で考えて行動を起こすことを促すような場面に適しています。
4)メリットとデメリット
ティーチングは、一度に同じことを多くの人にやり方や価値観を統一することができるというメリットがあります。一方で、教える人が教わる人に一方的に伝えるので、指示待ちになりやすいというデメリットがあります。
コーチングは、自分で考えて行動を起こすことができるようにアプローチするので、自発性が高まり、また、さまざまな場面で臨機応変に行動することがでできるようになるので、応用力も向上するというメリットがあります。一方で、一人ひとりの能力に合った形で個別対応で関わるため、ティーチングに比べると時間がかかるというデメリットがあります。
管理職がコーチングによるマネジメントができるようになる効果
以上のように、ティーチングにもコーチングにもメリットデメリットはありますが、管理職がマネジメントにコーチングをプラスすることにより、これまでの部下への関わり方のバリエーションが増えます。
コーチングは確かに効果が出るまでに時間がかかりますが、部下が自分で考えて行動を起こすようになれば、あらゆる場面に管理職が登場する必要がなくなり、管理職はプレイヤーとしての仕事を減らし、マネジメントに時間を費やすことができできるようになります。そうすれば、さらに部下が成長できる環境をつくることができ、スタッフ一人ひとりの生産性も向上するのではないでしょうか。
そして、コーチングは双方向のコミュニケーションです。コーチングによる対話を重ねることで、上司と部下がお互いのことを知る、理解することができ、信頼関係の構築にもつながるのではないでしょうか。